見たことのあるDVDに懐かしさを覚えながら1枚手に取る。悔しいが映画の趣味はこいつと一緒なんだ。
「何、また恋愛モノ見るの?欲求不満なの?」
笑いながら私の手からDVDを奪う。確かに年齢イコール彼氏いない歴だけど、その言い草はちょっとない。
「何でもいいって言ったんはそっちやろ」
損ねた機嫌を隠しもせずにDVDを奪い返してレコーダーに向かう。並ぶDVDの数に少し嫉妬しながらDVDを挿入した。
自分の家とは違う洋風の佇まいに気が落ち着かない。白いソファーに腰かけ、大きな液晶テレビを見つめる。いつの間にか目の前のテーブルには飲み物とお菓子が置いてあり、少し驚いた。「我が家ではいつもこうするんだ」と葵は部屋の灯りを消した。
何度と見たオープニングが大画面から流れてくる。
画面の光に照らされた葵の横顔を盗み見る。そもそも今まで家に上げたがらなかったこいつが突然家で映画を見ようと言い出した理由が分からなかった。常日頃他人に興味なさそうな顔で教室にいる癖に、私にやたらと絡んでくる真意も全く見えないのだから今更理解しようという努力が無駄なのだ。
画面に視線を戻すとちょうどラブシーンだった。葵は表情一つ変えないだろうが、私はこういうときどういう顔でいればいいのか分からなくなる。ああ、でも羨ましい。
「そんなにキスしたい?」
この質問は2度目だ。思い出したくもない。
無視しようとしたら無理やり横を向かされた。視界が葵の端正な顔で埋まる。同い年とは思えないほど妖艶な雰囲気を纏って、私を見つめる。
「キス、したらええやない」
いつか言われた言葉をそっくりそのまま返してやる。僅かに目が見開かれた。これは少し面白い。
「誰が、誰と?」
珍しく声が震えている。私が今まで気づいていないとでも思っていたのだろうか。たまにはこちらから振り回してもいいかもしれない。応える代わりに口角を上げてみせた。
「後悔しても知らないから」
視界が暗くなったと思った次の瞬間、唇に柔らかさと熱を感じた。
某携帯会社のCMがとても百合っぽかったので。
てっきり女子高生かと思っていたんですが、調べたところ中学生設定でびっくりした。
名前は勝手につけました。