「政宗様」
障子を開けた先に目にしたのは火鉢を抱え込むようにして暖をとる主だった。
奥州、しかも冬とあれば芯まで冷え込むのも分かるし、政宗様が冷え性なのも長い付き合いで知っている。だからといって奥州筆頭である身、少々頼りなく映ってしまう。
「寒い、早く閉めろ」
何と声をかけようか思考を巡らしていたところ、不機嫌な声が飛んだ。申し訳ありません、と謝り障子を閉め中に入ると満足そうにした。
「失礼ながら、政宗様……」
「OK,OK.分かってるよ」
火鉢から少し離れ正面に向き直った。
自覚しているなら、と許してしまう俺もまだまだ甘い。
「で?何かあったのか?」
「いえ、目立った不穏な動きはございません」
「Ah…、じゃあ何だ」
戦かと期待していたようで、目に見えて落ち込む主に苦笑する。
「非常に申し上げにくいのですが」
「いいから言え」
「若い衆が雪合戦をやると言っており、政宗様にも参戦して欲しい、と」
火鉢を抱えるようにするほど寒がっていた政宗様にこれを告げるのは少々心が痛んだ。だが羽目を外すことが好きなお人だ。言わなければ言わなかったで、竜の逆鱗に触れることは相違ない。
政宗様はしばらく固まっていたが、突然立ち上がり叫んだ。
「Shut up!バッカ、そういうことは早く言え!」
先刻まで火鉢に寄り添っていたとは思えないほどいきいきとした様子で、既に準備をしていた若い衆に吠えた。
「Are you ready guys?」
返ってきた雄叫びに満足そうに微笑み、意気揚々と雪の中へ飛び込んでいった。
「待ってました!筆頭ォォ!」
「HA!手加減は無しだぜ!You see?」
上下関係なく雪玉を投げ合う様子に思わず口角が上がる。
奥州、雪日和
眺めていた俺の顔に雪玉が直撃して、俺も参戦したのは言うまでもない。
寒がりな筆頭萌える、と思った結果。
上下関係なくはしゃぐ伊達軍が好きです。