君が目覚めるまでのほんのわずかな

 常に寄っている眉根も今はなくなって年相応の表情を覗かせる。こんな無防備な姿を晒して眠っているということは、相当信頼されているらしい。赤縁の眼鏡をそっと外す。この瞬間がとてつもなく好きだ。彼に心を許されていると実感できる。眼鏡を持ったまま、近くの椅子を静かに引いた。
 彼が身を沈めるソファはちょうど午後の暖かい日差しが当たっている。人よりやや色素の薄い肌が、青みがかった睫毛がきらきらと陽光を反射する。
「ん……」
 彼は僅かに身じろいだ後、緩慢な動きで目を擦った。目を瞬いて呆然と体を起こしている。
「おはよう、ギアッチョ」
 なるべく優しく、声を掛ける。寝ぼけたままの彼はふっと頬を弛めた。
「メローネか」
 どこか安堵したように名前を呼ばれるこの瞬間も好きだ。思わず目を細める。
 またぱちぱちと目を瞬き、今度は意識がはっきりしたらしく眉間の皺が戻っている。
「おい、眼鏡返せ」
 いつもの仏頂面でこちらに手を伸ばしてきた。ごめんごめん、と彼に眼鏡を返してやる。眼鏡をかけてこちらを見つめる様子はすっかりいつもの見慣れた顔だ。
「何にやにやしてんだ、テメエ」
「べっつにー」
 俺はやっぱり目つきが悪くて悪態をついてくるいつもの彼が一番好きだな。

お題は「確かに恋だった。」様から。
息抜きとして書いたメロギア。

2014.02.15