どういう未来が待ち受けていようと、例えそれが重圧に耐え忍ばなければならない未来だとしても、受け入れる覚悟はできていた。
「みんなにはカミングアウトしよう」
だから目に染みるような朝焼けを浴びて一松が宣言したとき、カラ松は同意する以外の選択肢は持っていなかった。打ち明ける未来も墓まで持っていく未来も、どちらも受け入れるべき未来ならば抗うことはしたくなかった。
一松が決めたなら、俺は喜んで従うぜ。
言葉にすれば、自分の意見はないのかと怒られることは容易に想像がつく。兄として、恋人として、できる限り誰よりも生真面目で抱え込みやすい一松の決断に寄り添いたかった。もし家族から非難されることがあれば真っ先に矢面に立つのは自分であるべきだと思っていた。
「カミングアウトしようって簡単に言ったけどさ、みんなの前で明け透けに宣言するってわけにはいかないと思うんだよね」
一松の宣言から少し経ったある日、釣り堀に一松がやってきた。一人で糸を垂らしていたカラ松の隣を陣取り、世間話をするかのように話し始めた。
「お前が釣りに来るなんて珍しいな」
「まあ、そうだね。あんたこそ一人なのは珍しくない? いつもトド松あたりと行ってたと思うんだけど」
「フッ、男には孤独が付き物さ」
竿を投げながら「意味分かんねえ」と吐き捨てられた。
「で、話戻すけど」
糸の先を見つめながら一松が事も無げに話を続ける。
「全員集めて交際宣言とか絶対無理。まず内臓的なモノが口から出そうだし反応も怖くて見れない」
「……少なくとも一斉に質問攻めにはされそうだ」
口達者な兄弟たちに矢継ぎ早に質問される光景が容易に思い浮かんでしまった。一気に捲し立てられて、十割即答できるほど一松もカラ松も弁が立つ方ではない。いっぱいいっぱいになって口を噤んでしまうのがオチだ。
「……やっぱり無理だわ」
同じ想像をしたのか、一松が肩を落とした。ぶつぶつと「僕には僕のペースがあるのに」とぼやいているのも聞こえた。こればかりは同感だ。
「全員は無理となると、一人ずつか?」
「ええーそれはそれで無理」
「なんで」
「だってダイレクトに反応が返ってくるじゃん。一人目で拒絶とかされたらあとの三人に言う気力は残らねえよ」
「二人ずつとかか?」
「なんで増やすんだよ! それくらいなら一人ずつの方が断然マシだわ」
じとりと一松が睨みつける。ようやくまともに目を合わせたが、表情がどことなく疲れていて、一人で考える間も堂々巡りしていたんだなと察した。
「じゃあそうしよう。何もお前だけで話すんじゃないんだ。俺もいる、これ以上心強いことはないだろ?」
片手で銃を形づくり、一松めがけて撃つ。
「そうだな」
露骨に嫌そうな表情を浮かべると思っていたが、一松は心底安堵したように笑った。
ぶわっと顔が熱くなる。そんな表情、反則だろ。
「自分で言っておいて照れるってどうなの」
一松が呆れる。平然としているが耳の端がほんのり赤く染まっているのが見えた。
「お互い様だろ」
誰も見てなくて良かったと思った。大の大人が二人、並んで赤面している状況は端的に言って、異常だ。
「一人ずつって言ったってどうすんの。呼び出す?」
一松が唇を尖らせる。
「そうなるよなあ。家で話して、誰か来ないとも限らないだろ。他に誰もいないって確証があるときならいいけど」
「どっちにしろ場所は考えなきゃいけない、ってことだな」
不意に一松が竿を上げる。
「帰るのか?」
「うん、話したかっただけだし」
「俺も帰る!」
「好きにすれば」
すたすたと歩きだした一松の後を慌てて追う。カラ松が追いつくまで待ってくれていることを知っていたが、早く隣に並びたくてつい小走りになってしまう。
「そんなに一緒に帰りたいわけ?」
カラ松が追いつくとにやにやと一松が目を細めた。嬉しそうだ。素直に「ああ、そうだぞ」と返すと、一瞬目を見張って、やがてゆっくりと目を弓なりに歪めて「あっそ」と言った。
一松は変なところ素直だよな。天邪鬼というか、不器用というか。
うんうん唸っていると、一松はいつの間にかいつもの仏頂面に戻って話を蒸し返した。
「あ、そうだ。誰から話そうとかパッと思いつく?」
「うーん、ここはやっぱりおそ松が順当だとは思うな。お前はどう思う?」
「俺は十四松の顔が浮かんでた。でも確かに、おそ松兄さんから、ってのが自然かな。ラスボスって感じがして、俺、既に吐きそうなんだけど」
そういう一松の顔は青ざめはじめていて、不自然に見えない程度に背中をさする。
「気持ちは分かるぜ。でも最初に言わないと機嫌を損ねてしまいそうじゃないか?」
「あー……ぽいわ」
きゅっと目を瞑って、一松が細く息を吐く。吐き終えて「もう大丈夫」とやんわり背中に添えられていたカラ松の手を払った。
「おそ松兄さんかー」
「お、何? 呼んだ?」
溜息と共に吐き出した一松の声に重なるように背後から聞き慣れた声がする。噂をすれば何とやら、おそるおそる振り返った先にはおそ松がひらひらと手を振っていた。
「お前らが一緒にいんの珍しいなー。帰り?」
「さっき偶然一緒になってな。おそ松も帰るところか?」
「そ! お馬さん負けちゃってぇ」
おそ松が自然に一松との間に割り込んでくる。気づかれないように一松の様子を窺うと、ぱちりと目が合う。ぴくっと一松の頬が引き攣り、目線で変なことするなと訴えていた。了承の意を込めて片目を瞑ると目を逸らされた。
「負けた割には機嫌がいいな」
「え〜なになに? それ聞いちゃう?」
もったいぶった口調にやや苛立つ。
「今日ずっと負けてたんだけど、最後の最後で勝っちゃって! やっぱり俺ってさすがだよな〜!」
「それ、プラス出たの?」
静観するという予想に反して一松が口を挟んだ。
「ま、明日の軍資金くらいはな」
へへ、といたずらっぽく笑っておそ松が鼻の下をこする。採算が取れたことがよほど嬉しいのだろう。
「まじか。おそ松兄さん、あざーっす」
「うっわ、たかる気だよこの子! サイテー!」
ケラケラと笑い声が住宅街に響く。
おそ松が勝ったら寿司でも取るか。
兄弟二人の背中を眺めながらカラ松は明日の夕飯に思いを馳せた。
翌日、案の定というか予想通りというか、おそ松は全敗して帰った。夕飯は鶏のから揚げだったからカラ松は寿司が食べれなったことに対して不満はなかった。
「結局負けてたね」
玄関先で一服していると一松がやってきた。無言で差し出された手に箱とライターを乗せる。さも当然のように火を点け、煙を吐く。「ん」という一言とともに返された。
「まあ、期待はしてなかったさ」
「そうだけど。回る方でいいから寿司食いてえわ」
「今度行くか」
「ゴチでーす」
「割り勘な。俺、金無い」
「パチンコで一発当てて、可愛い弟に恵んでくれないんですかねえ、クソ松兄さんは」
「言わぬが花って言葉知ってるか、一松」
「知ってる。冗談だよ、冗談。お前がボロ勝ちしたならまだしも、全額奢られるのは男としてのプライドが廃る」
「甲斐性あるんだな」
「おいそれはさすがに失敬だろ」
「冗談だよ」
二人で同時に息をつく。空気が少しぴんと張る。神妙な面持ちで一松が話を切り出した。
「あのさ、もしもの話だけどさ、おそ松兄さんにドン引きされたらどうする?」
本人は平然と言ったつもりだろうが、言葉の端々が震えていた。兄弟を拠り所とする一松にとって、その兄弟からの拒絶は何よりも恐ろしいものだろう。気丈に振る舞っているが内心じゃ不安で押しつぶされそうだということも容易に想像がつく。
「そうだな、その時は駆け落ちでもしようか」
ぽろっと零すと、一松は瞠目していた。
そこまで驚くことを言ったつもりはない。見知らぬ街で一松と二人ひっそりで暮らしていくのもいいかと思っただけだ。
「駆け落ち、って」
「まあ、実際おそ松に引かれる程度で済むならノープロブレムだ。だがもし家の空気が悪くなるのならお前と二人、ランデブーと洒落込むのも悪くないだろう?」
ニッと歯を見せる。一松は毒気を抜かれたようにその場に座り込んでしまった。
「ほんと、っぽいわ。そういうとこ」一松は溜息をつく。「俺がバカみたいだ」
「そういう石橋を叩いて渡るところ、好きだぜ」
「……勘弁してくれ」
とうとう頭を抱えてうずくまってしまった。全く可愛い奴だ。
「俺さぁ、居酒屋がいいと思うんだよね」
腕に阻まれてくぐもった声がする。
「居酒屋?」
「うん、個室があるやつ。そしたら周りに聞かれることもないし、おそ松兄さんも呼びやすいし、アルコールが入れば話しやすいかと思って。どう思う?」
「異論はないぜ」
何巡も考えを巡らせて選んだ結論を否定できる材料をカラ松は持ち合わせていなかった。そもそも一松の方が物事を熟考する性格だ。直感で判断するカラ松とは大違いだ。
「早いうちがいいよな。店の予約とかはするか?」
「予約は俺がする。だから、おそ松兄さんに話通しておいてよ」
「ああ、分かった。段取りとか決めとくか?」
「そうだね。それは、また今度決めよう。そろそろ銭湯行く時間だし」
一松が言い終わるや否や、玄関が開いてトド松が顔を出した。
「兄さんたち、早く準備しないと置いてくってよー」
「分かった、すぐ行く」
慌てて煙草を揉み消して家の中へ戻った。
◇ ◇ ◇
隙を見てカラ松と段取りを相談し、いよいよ決行の日になった。店は抜かりなく予約した。他の客に聞かれないようにちゃんと個室を押さえた。電話で予約したときは手汗で携帯が滑り落ちそうだったが、そこで行うことを考えれば何とか乗り越えられた。
昨晩は布団の中で何をどのタイミングで言うべきかシミュレーションしていたら、すっかり朝になっていた。一睡もできなかった。遠足前の小学生でもさすがに眠りに落ちることくらいできたと思う。不幸中の幸いというか、深夜、一松が起きてることに気づいたカラ松がそっと手を握ってくれたのはかなり心強かった。カラ松はいつの間にか寝息を立てていたけれども。
「おそ松、少しいいか?」
カラ松が寝そべっているおそ松に声を掛ける。段取り通りだ。予想通りおそ松が「なになに〜?」と食いついたので、一松は先に家を出た。
段取りが飛んでさえいなければ、カラ松は今頃、家ではできない大事な話があるから飲みに行こうと誘っているはずだ。細かい部分が違っていても問題はない。店にまで連れてくることができれば第一段階クリアだ。道中カラ松がうっかり話の内容を言ってしまわなければ、あるいはおそ松の気が乗ってしまえば、あとはどうにでもなるだろう。
店員に案内され、一松はひとり個室に入った。隣の個室とは襖で仕切られ、通路側も上下に隙間のあいた引き戸になっている。三人で予約したため今回は四人席だが、掘りごたつなので無理矢理六人入ることも可能だろう。一松は一通り見渡してからメニューを手に取った。飲み物はビールに違いないから勝手に頼んでしまうのもひとつだが、ビールがあまりにも早く来ても泡は消えるしぬるくもなる。時間制限があるわけでもないし、注文は揃ってからの方が良さそうだ。
「なあ、お連れ様がお待ちです、って言わなかった? 誰かいんの?」
「ああ。とりあえず入ってくれ」
「えええなんかヤダなあ」
聞き慣れた声に耳が反応する。もう着いたのか。
「どうもー」
ガラッと引き戸が開く。一松と目が合い、おそ松が目を丸くする。状況を把握できないおそ松がおそるおそる振り返った。
「おそ松はとりあえずそっちだな」
空気が読めないのか、読む気がないのか、カラ松はおそ松の動揺を一蹴する。にべもない。一松は心の中でおそ松に同情した。
おそ松が一松の向かいに座ったのを確認してから、カラ松は一松の隣に腰を下ろした。
「あー、おそ松兄さん、ビールでいい?」と一松は呼び鈴を押した。
「おう、悪いな」おそ松はどことなくばつが悪そうに膝を揺らす。「なんで一松がいるんだ、とか聞いちゃいけないカンジ?」
一松は隣を一瞥して「別に言っちゃいけないきまりはないんだけど」と返した。
「カラ松に大事な話があるって言われたから来たのに、お前いるからちょーっと混乱してんだよね。説明してくんない?」
「まあ何ていうか、俺もその大事な話ってヤツに関係あるんだよね。だから相席してるわけ」
「そっか。詳しいことは酒が来てからじっくり聞くわ」
化粧が派手な女性がビールとお通しを運んできた。早いな、と誰ともなく呟く。
「じゃあ、まあ、よく分かんねえけど、かんぱーい!」
おそ松の音頭でジョッキが三つぶつかる。景気づけだ、と一松はいつもより勢いよくあおった。喉を通る炭酸が清々しい心地だ。仕事の後のビールはうまいというのはまさにこういうことだ。惜しむらくはここにいる誰も働いていないことだろう。
ダン、と勢いよくジョッキを置く音が個室に響く。
思わず肩が跳ね、向かいのおそ松と目を合わせた。
ゆっくりと視線を音の立てた方へ向けると、カラ松は背筋を正して射るようにおそ松を見据えた。
「え、なに? 俺、なんかした?」
縋るようなおそ松に一松は強く首を振る。こんなの段取りにはなかったから分かるわけない。もっと和やかな雰囲気でいこうって話していたはずなんだけど。
「おそ松、お前の弟を俺に下さい」
「は?」
おそ松と一松の声がシンクロした。
いやいやいやいや、段取りに無かったよね? そもそも俺が言うって話だったと思うんだけど。なに、これどういうこと。俺、この固まった空気フォローしなきゃいけないの? 無理だよ、無理。そんなことできるならこんなに念を入れて準備したりしないし。おそ松兄さんとかもう表情読めないもの。喜怒哀楽のどの感情かも察せないもの。まだ怒られたり引かれたりする方がマシでしょ、完全に。無表情っていうか無我だよ。悟り開けちゃうよ。この空気どうすんだよ、クソ松!
二人分の視線を物ともせず、深々と土下座した。
「え、ちょっ、なに? お兄ちゃん、話が読めないんだけど。一松、説明してよ。そんでカラ松はとりあえず顔上げろ? なっ? ほら、とりあえず飲んどけ飲んどけ」
カラ松は勧められるがまま、無言でジョッキに残ったビールを飲み干した。言うべきことを言ったからか、表情が晴れやかになっているように見えた。お前だけすっきりしてんじゃねえよ、と一松は心の中で毒づいた。
「……で、俺はどっから聞けばいいの?」
ジョッキを傾けながら、おそ松が交互に弟たちの顔を見た。
「松野家の長男であるおそ松には話を通しておくことが筋だと思って」
「うん? まあ、仲間はずれはヤだからそれは間違ってないけど。ちょっとお前は黙って。なあ一松、分かりやすく話してくれよ」
優しく促してくれる姿はやはり腐っても長男なんだと認めざるを得ない。カラ松とも違う包容力がおそ松には備わっている。普段はクズの極みなのに、このギャップはずるいなと思った。
「上手く話せるか分からないけど」と前置きをして、一松はこれまでのことをかいつまんで語った。
カラ松と恋人として付き合っていること。同性で兄弟ではあるが、それも承知の上だということ。大事な話というのは、このカミングアウトだということ。
途中で言葉に詰まることもあったが、茶化すこともなくおそ松は最後まで黙って聞いていた。何もかもを見透かすような瞳から逃げたくなったが、自らを奮い立たせ、できる限りその瞳を真っ向から見据えた。
「お前ら、最近変だと思ったらそういうことだったの。びっくりした」
話を聞き終わっておそ松が言った。今までの話はただの世間話だった、とでもいうような様相で店員を呼び、てきぱきと注文を告げる。始めに見た派手な女性は見た目に反して、愛想良く去っていった。
「意外にあっさりしてるんだな」
店員を見送ってからカラ松がおもむろに尋ねた。同感だった。もっと何かしらの反応があると思っていた。
「どういう反応がくると思ったわけ?」
早々に運ばれてきたビールに口を付ける。口元に泡が残ったせいで威厳はない。
「引かれるかと思ってた」カラ松より先に言葉を返す。「だって、男同士で兄弟で、同じ顔だ」
きょとんとした表情を浮かべ、おそ松は再び二人の顔を見比べた。口の端に残る泡を拭ってからおそ松は人を食ったような笑みを浮かべる。
「まあ、これが告白だったら引いてたかもね。でも今回は対象が俺じゃねえし。別に俺は弟が変態でもゲイでも許せるよ? それに、お前らの目ェ見てるとさ、俺がここで反対しても意味ねえんだろうなって目ェしてんだもん。お兄ちゃん、反対とかできねえわ」
ぐいっとジョッキを呷り、おそ松はニッと歯を見せた。
「まあ、なんだ。幸せになれよ、お前ら」
鼻の奥がツンとした。
当たり前のように受け入れられ、当たり前のように祝福される。こんなに自然に享受してもいいのだろうか。
カラ松も一松も声を震わせながら「ありがとう」とうつむくことしかできなかった。
「へへっ、今日は長男様の奢りだ!」
ちょうどよく引き戸が開いた。続々と料理が運ばれてくる。鶏のから揚げ、出し巻玉子、ほっけの開き、たこわさび、フライドポテト、手羽先――。おそ松が注文していた品らしい。
「そんな金どこにあったんだ?」
一松の疑問を代弁するかのようにカラ松が尋ねた。
「ん? まあちょっとね」
くいっと右手を捻った。パチンコか。
「湿っぽい話は後にして、とにかく食おうぜ!」
おそ松が割り箸を割ったのを合図に、一斉に料理に箸を伸ばした。
「はー食った食った」
テーブルを埋め尽くしていた料理は消え、熱い緑茶を啜る。緊張していたせいか、酒量を控えたつもりだったにもかかわらず、アルコールが回っている感覚がする。
「ありがとう、おそ松兄さん」
一松は改めておそ松に頭を下げる。何から感謝していいのか分からなかった。
「礼なんか要らねえよ。餞別だと思ってくれたらいいよ」
鼻の下をこすって笑った。
六つ子の長男なだけある。きっとこれからも敵わないんだろうな。
「で、他の奴らには言ったの?」
「いや、まだだ。これから言っていこうと思ってる」とカラ松が答えた。
「そっか」
「だから、できれば黙っていてはもらえないだろうか」
おそ松の視線が自分に向けられたのを感じ、一松も首を縦に振った。
「お前らがそう言うんなら黙っとくよ。喋ったところでメリットはないしな」
「何から何まですまない」
「いいってことよ。ま、なんかあったら相談してくれてもいいぜ。次回からは有料だけどな!」
こんなにも頼もしいことはない。
不安だらけだった自分の決断に、一松は一縷の望みを見出した。
なんたって長男様だからな!
パチンカス(どちらかというと競馬に行ってることの方が多そう)なのに懐が深いというか長男らしいことしてるとギャップでくらくらしますね笑